友川カズキ『イナカ者のカラ元気』
text by Michel HENRITZI
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友川カズキは、古典的なアーティストである。というのも、彼は日本の伝統的な音楽の真髄をしっかりと持ち合わせていて、それに対して侵食したり浮かび上がらせたりするからだ。読者の方は、一刻も早く彼の作品にふれて欲しい。
肺にとりこむ空気のように生命にとって必要不可欠で、月の無い夜のように暗く、ブラインド・ウィリー・ジョンソンのブルースのように情感に溢れている。 友川の音楽は過去に逃れた悲しみや現在のさびしさなど、欠けていて埋まることのないものから生まれる。
危ういバランスの上に立ち、皮を剥がれたような、霊的かつ愛と暴力で満ちあふれた彼の声。それは壊れやすいが燃えているようでもあり、日本に伝説の妖怪を思い起こさせる。稀にみるこの忌々しい声は、アントナン・アルトー・モモの叫びのようだ。その表現は、野性的なロックンロールであり、このような鋭いガラスの上で踊るさまは、ジャック・ブレルやイギー・ポップまで遡らなくては想起できない。何かに取り憑かれ、服従することなくドラッグをやっているかのようにむきだしで、暗闇と祈祷を人々と共有するフォークシンガー。
彼のギターは引き裂かれるために存在する繊細なレースの布、または暴力的で破壊的なジプシー・ジャズのアルペジオで構成され、彼の手は自虐的行為により出血している。
このほど、ヴィンセント・ムーンが友川カズキの 素晴らしいドキュメンタリー映画『花々の過失』を完成させた。日本の中でも最も危険な大阪のとある場所で撮影され、 関連映像が以下のサイトからご覧頂ける。その映像は幻覚的であり、見るものは無傷のままではいられない。友川は廃屋で叫んでいる「妖怪」のようであり、「幽霊」としてなおも留まりながら唄っている。
http://www.blogotheque.net/Kazuki-Tomokawa,5100
最新アルバム『イナカ者のカラ元気』— この作品は、信じられない美しさと果てしない孤独を持った友川カズキの世界にどっぷりと浸ることができる。
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ミッシェル・エンリッティ(Michel HENRITZI)
REVUE & CORRIGEE #82_ 2009年12月号に掲載