出演:友川カズキ
撮影:ヴィンセント・ムーン
プロデュース:小池直人
音声:テレサ・イガーズ
ミックス:ギャスパー・クラウス
2009年2月大阪にて撮影
Part 1:『海みたいな空だ 』『星を食べた話 』(共演:永畑雅人)
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『星を食べた話 』 詩:稲垣足穂 / 補作詩・曲:友川カズキ
ある晩露台に 白っぽいものが落ちていた
口へ入れると カルシュームみたいな味がした
自分が敷石の上に起きた時
黄色い窓が月下にカラカラ
月下にカラカラとあざ笑っていた
何だろうと考えていると
だしぬけに街上へ突き落とされた
口の中から
星のようなものがとび出して
尾をひいて屋根のむこうへ
尾を引いて屋根のむこうへ
星はやがて見えなくなってしまった
星は確かに食べられた
自分は鉄砲にタマをこめて
真っ黒な空の
まんなかをねらって引き金をひいた
たちまち米国星条旗の空が
たちまち米国星条旗の空が
ヒラヒラと頭上にひるがえった
Part 2:『ピストル』(共演:永畑雅人、ギャスパー・クラウス)
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『ピストル』 詩・曲:友川カズキ
テーブルにピストルがある
育ちすぎたアザミの息の根が
確かに私のなかにある
空も 指も あてにはならない
みどりだか ひかりだかが立っていた
盲目にそれをただただ抱きしめた
不在を明かす風のなか
私は未だに立っている
タマはこめられているのか いないのか
その時はあるのか ないのか
戦争反対も結構だが
人間反対ではないのか
銃口は眼前にある
ここでもどこでもそれは同じ
なにくそっと言ったところで
空も 指も あてにはならない
テーブルにピストルがある
テーブルにピストルがある
それは約束された花なのか
それは裏切りの重量なのか
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Part 3:『井戸の中で神様が泣いていた』『絵の具の空』(共演:ギャスパークラウス)
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『絵の具の空』 詩・曲:友川カズキ
あの角を曲がればと
いつもいつも思ってた
花咲くころはことさらに
カカトを強く打ち付けた
空はどこまでも天高く
私ら魂吸い込んで
その残酷な青さいつか
傷つけたいと思っていた
春でも夏でもなかったような
長い時節のさら底を
ハダカでさまよっているようだ
はくせい獣 声がする
オッホオッホ呼ばれても
戻るカカトがすでにない
いつかめざした角さえも
茫洋霧がけむってた
絵の具の空のまばたきは
青く硬く澄んでいた
絵の具の空のまばたきは
青く硬く澄んでいた