友川カズキ TOMOKAWA KAZUKI

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友川カズキ 自作絵画コレクション


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画家としても四十余年におよぶキャリアを持つ友川カズキ。
近年は380×270mm(画用紙/八つ切り)サイズの
アクリル/水彩画の制作を主としてきましたが、
「最近、ちょっと思い立って」(本人談)、
過去に描き溜めていた四つ切りサイズのスケッチや
長らく中断されたままの未完作品群を自室の押入れから召喚。
制作に再着手し、様々な画材・手法を用い、
大胆な変奏を加えて「現在形」の作品として完成させました。
いずれの作品にも「妙な手応えを感じている」という友川。
2021年以降の絵画作品を本特設コーナーにて公開します。

36海の花火

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36海の花火detail_0236海の花火detail_0436海の花火detail_0136海の花火detail_03
ディテール
タイトル:
「海の花火」
サイズ:W 540mm × H 380mm
(アクリル水彩)
価格:150,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

35オオカミの速度

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35オオカミの速度detail_0135オオカミの速度detail_0235オオカミの速度detail_0335オオカミの速度detail_04
ディテール
タイトル:
「オオカミの速度」
サイズ:W 270mm × H 380mm
(アクリル水彩、ペン)
価格:120,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

34望郷

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34望郷detail_0434望郷detail_0234望郷detail_0134望郷detail_03
ディテール
タイトル:
「望郷」
サイズ:W 380mm × H 270mm
(アクリル水彩)
価格:100,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

33鬼の子あそぶ

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33鬼の子あそぶdetail_0333鬼の子あそぶdetail_0233鬼の子あそぶdetail_0133鬼の子あそぶdetail_04
ディテール
タイトル:
「鬼の子あそぶ」
サイズ:W 380mm × H 270mm
(ペン、アクリル水彩)
価格:80,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

32カザルスの無伴奏

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32カザルスの無伴奏_detail0432カザルスの無伴奏_detail0332カザルスの無伴奏_detail0132カザルスの無伴奏_detail02
ディテール
タイトル:
「カザルスの無伴奏」
サイズ:W 380mm × H 270mm
(アクリル水彩)
非売(個人蔵)

31エイガ「犬の生活」を観た

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31エイガ「犬の生活」を観た_detail0131エイガ「犬の生活」を観た_detail0231エイガ「犬の生活」を観た_detail0331エイガ「犬の生活」を観た_detail04
ディテール
タイトル:
「エイガ「犬の生活」を観た」
サイズ:W 380mm × H 270mm
(アクリル水彩、クレヨン)
価格:80,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

立ちんぼ日和

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立ちんぼ日和_detail01立ちんぼ日和_detail02立ちんぼ日和_detail03立ちんぼ日和_detail04
ディテール
タイトル:
「立ちんぼ日和」
サイズ:W 380mm × H 270mm
(アクリル水彩、墨)
価格:80,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

カマクラで遊んだ

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ディテール
タイトル:
「カマクラで遊んだ」
サイズ:W 270mm × H 380mm
(アクリル水彩、墨)
価格:100,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

トウキビ畑

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トウキビ畑_detail01トウキビ畑_detail02トウキビ畑_detail03トウキビ畑_detail04
ディテール
タイトル:
「トウキビ畑」
非売(個人蔵)

賑やかなアーチ

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ディテール
タイトル:
「賑やかなアーチ」
サイズ:W 540mm × H 380mm
(アクリル水彩、墨)
価格:160,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

安子ガンバレ!

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安子ガンバレ!_detail01安子ガンバレ!_detail02安子ガンバレ!_detail03安子ガンバレ!_detail04
ディテール
タイトル:
「安子ガンバレ!」
サイズ:W 270mm × H 380mm
(アクリル水彩)
価格:100,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

25気分屋は正しい

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ディテール
タイトル:
「気分屋は正しい」
サイズ:W 270mm × H 380mm
(アクリル水彩)
価格:120,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

24動物園が好き(敵対Ⅲ)

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24動物園が好き(敵対Ⅲ)_detail0124動物園が好き(敵対Ⅲ)_detail0224動物園が好き(敵対Ⅲ)_detail03
ディテール

タイトル:
「動物園が好き(敵対Ⅲ)」
サイズ:W 380mm × H 270mm
(アクリル水彩、墨)
価格:80,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

23遠い朝

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23遠い朝_detail0123遠い朝_detail0223遠い朝_detail03
ディテール
タイトル:
「遠い朝」
サイズ:W 380mm × H 270mm
(アクリル水彩、墨)
価格:80,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

22幼少期(敵対Ⅱ)

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ディテール
タイトル:
「幼少期(敵対Ⅱ)」
サイズ:W 380mm × H 270mm
(アクリル水彩、墨)
価格:100,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

21ユトリロの宝箱

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21ユトリロの宝箱_detail0121ユトリロの宝箱_detail0221ユトリロの宝箱_detail0321ユトリロの宝箱_detail04
ディテール
タイトル:
「ユトリロの宝箱」
サイズ:W 380mm × H 540mm
(アクリル水彩)
非売(個人蔵)

20モーリス・ユトリロ

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ディテール
タイトル:
「モーリス・ユトリロ」
サイズ:W 270mm × H 380mm
(アクリル水彩、墨)
価格:100,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

19大島でスケッチ

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19大島でスケッチ_detail0119大島でスケッチ_detail0219大島でスケッチ_detail0319大島でスケッチ_detail04
ディテール
タイトル:
「大島でスケッチ」
サイズ:W 530mm × H 370mm
(アクリル水彩、クレヨン)
価格:120,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

18ルドンにおかされた

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18ルドンにおかされた_detail0118ルドンにおかされた_detail0218ルドンにおかされた_detail0318ルドンにおかされた_detail04
ディテール
タイトル:
「ルドンにおかされた」
サイズ:W 340mm × H 450mm
(アクリル水彩)
非売(個人蔵)

17永遠と刹那

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17永遠と刹那detail0117永遠と刹那detail0217永遠と刹那detail0317永遠と刹那detail04
ディテール
タイトル:
「永遠と刹那」
サイズ:W 270mm × H 380mm
(アクリル水彩)
価格:100,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

16幼女熱唱

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16幼女熱唱detail0116幼女熱唱detail0216幼女熱唱detail0316幼女熱唱detail04
ディテール
タイトル:
「幼女熱唱」
サイズ:W 380mm × H 540mm
(アクリル水彩)
価格:180,000円(税込)
※価格には額装費用と国内送料が含まれています。

15光矢の犬、リン

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ディテール
タイトル:
「光矢の犬、リン」
サイズ:W 270mm × H 380mm
(アクリル水彩、クレヨン)
非売(個人蔵)

14大サーカスの日

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ディテール
タイトル:
「大サーカスの日」
サイズ:W 380mm × H 540mm
(アクリル水彩)
非売(個人蔵)

13ブルゴーニュの牛

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13ブルゴーニュの牛detail0113ブルゴーニュの牛detail0213ブルゴーニュの牛detail0413ブルゴーニュの牛detail03
ディテール
タイトル:
「ブルゴーニュの牛」
サイズ:W 540mm × H 380mm
(アクリル水彩、メジウム)
非売(個人蔵)

12二郎の庭にふりつむ

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ディテール
タイトル:
「二郎の庭にふりつむ」
サイズ:W 540mm × H 380mm
(アクリル水彩、墨)
非売(個人蔵)

11ブルゴーニュの家並

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ディテール
タイトル:
「ブルゴーニュの家並」
サイズ:W 540mm × H 380mm
(アクリル水彩、ペン)
非売(個人蔵)

10ブルゴーニュの川

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ディテール
タイトル:
「ブルゴーニュの川」
サイズ:W 540mm × H 380mm
(アクリル水彩、ペン)
非売(個人蔵)

09特別な日

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タイトル:
「特別な日」
サイズ:W 540mm × H 380mm
(アクリル水彩)
非売(個人蔵)

08大島へ行った

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タイトル:
「大島へ行った」
サイズ:W 540mm × H 380mm
(アクリル水彩、墨、メジウム)
非売(個人蔵)

07ハタハタの海

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07detail_107detail_207detail_3ディテール
タイトル:
「ハタハタの海」
サイズ:W 540mm × H 380mm
(アクリル水彩)
非売(個人蔵)

06野兎の跳び

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06detail_106detail_206detail_3ディテール
タイトル:
「野兎の跳び」
サイズ:W 540mm × H 380mm
(ろう画/アクリル水彩、クレヨン)
非売(個人蔵)

ここから始まった

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ここから始まったここから始まった
ここから始まったここから始まったディテール
タイトル:
「ここから始まった」
サイズ:W 370mm × H 530mm
(アクリル水彩)
非売(個人蔵)

手のなかの拒絶

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手のなかの拒絶手のなかの拒絶ディテール
タイトル:「手のなかの拒絶」
サイズ:W 455mm × H 360mm
(アクリル水彩、墨)
非売(個人蔵)

オイチョの夜

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オイチョの夜オイチョの夜オイチョの夜ディテール
タイトル:
「オイチョの夜」
サイズ:W 370mm × H 530mm
(アクリル水彩)
非売(個人蔵)

国道七号線

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国道七号線国道七号線国道七号線ディテール
タイトル:
「国道七号線」
サイズ:W 375mm × H 535mm
(アクリル水彩、メジウム)
非売(個人蔵)

二郎も、クレーも、ヘルペスも、

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二郎も、クレーも、ヘルペスも、二郎も、クレーも、ヘルペスも、
二郎も、クレーも、ヘルペスも、二郎も、クレーも、ヘルペスも、ディテール
タイトル:
「二郎も、クレーも、ヘルペスも、」
(アクリル水彩)
サイズ:W 540mm × H 390mm
非売(個人蔵)

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二郎も、クレーも、ヘルペスも、

Q.タイトルの由来について教えてください。
A.二郎は、小山田二郎という画家の名前。
クレーは、言うまでもなくパウル・クレーですね。二人とも大好きな画家です。
最近、小山田二郎が気になって気になって仕方なくて。図書館で何回も画集借りたり、去年は日本橋まで展覧会を観に行ったりもした。
で、ヘルペスっていうのは今患っている顔面神経麻痺のことね。

Q.かなり描き込んだ形跡がありますが、制作にはどれくらい時間を要したのでしょうか?
A.トータルで1週間くらいかかったかな。
もともとは未完成のまま長年放っておいた絵なんだけど。最近、ちょっと思い立ってね。
コロナやらなんやらで外出できないのを逆手にとって、押入れの奥から取り出して、再着手してみたのよ。
そしたら自分でもどんどん面白くなっちゃって。ストーブの温風で絵の具を乾かして、乾いたらまた塗って。最後は2日間徹夜して一気に仕上げた。
なんかもう、この絵は永遠に描き続けられそうな感じもあって。

Q.完成した時、どんな気分でしたか?
A.達成感というのとは全然違うんだけど、今まで味わったことのない感じがあったんですよね。
万年床の横に置いてボーッと見てると、「これは入口なのか、出口なのか」っていう、妙な感じ。
そもそもテーマも何もなく描いているもんだから、自分ではうまく説明できないんだけど。
何かしら良い気分ではあったんだよな。
「はて、ここからどこへ行けるんだろう」っていうね。

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国道七号線

Q.絵柄の由来について教えてください。
A.いわゆる「雪霊伝説」がモチーフなんだけど。
もっと具体的にいうと、真冬にね、角巻きをかぶって連れ立って道を歩いてる老婆たちのイメージだね。
婦人会の寄り合いに出かけた、育ての親のお祖母ちゃんを猛吹雪のなか迎えに行った時の思い出。
道の向こうからいきなり老婆たちが出て来たもんだから、ビックリしちゃって。
いや、幼心にも実に強烈な光景でしたよ。

Q.タイトルも秋田に関係してますね。
A.そうそう、生家のすぐそばを通っている国道7号から拝借、というかそのものズバリ。
私が幼い頃は未舗装だったし、牛馬のフンだらけだった。冬は地吹雪でホワイトアウト状態になるのよ。

Q.画肌に独特の質感がありますが、特殊な画材によるものですか?
A.艶消しメジウムを使ってるんです。
これも20年以上前に途中まで描いたままお蔵入りになってた絵で。
その頃は蝋画っぽいのもよく描いてたし、メジウムも久々にやってみたらなかなか面白くてね。

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オイチョの夜

Q.「オイチョ」とは、もちろん「オイチョカブ」のことですよね?
A.むかし、土方やってたころね、飯場での数少ない楽しみが花札とかオイチョカブだったの。
雨降ると他にやることないんだもん。

Q.描いている時の楽しさが伝わってくるような作品ですね。
A.絵を描くのが楽しいのは、偶然が思わぬ産物を生むから。
ひたすら大物狙いの漁師、みたいなもんで。釣り糸を垂れてみないと、どうなるかわからないのがいいの。

Q.人物の肌の淡い色味が凄く良いですね。
A.何も考えずにやってるから、偶然なんだけどね。
これは自分でも「なかなかヒットだな」と思うけど。
あくまで、出たとこ勝負の面白さ、なのよ。

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手のなかの拒絶

Q.ウサギの絵は過去に何百枚と描いてますよね。
A.なんかスーッとね、描いちゃうんですよ。
描き飽きない、ということでは決してないんだけど。
表情とか色彩を変えながら延々と遊んでる、という感じですね。

Q.ウサギの輪郭線には墨を使ってますね。
A.そうそう、一筆書きみたいな。かすれてるところとか、そのまま活かしてね。
まあ、これも偶然の産物ですよ。

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ここから始まった

Q.この絵柄は『海静か、魂は病み』(1981)のジャケ画に似てますね。
A.これまた、その頃に描いたエンピツの下絵をたまたま見つけてさ。
80年代のはじめ、本格的に絵を描き始めた頃に、こういうカタチの人物画をよく描いてたのよ。
ちょっと懐かしいよね。

Q.背景の青と人物の赤のコントラストが強烈です。
A.何度も色を塗り足したんですよ。絵の具もそうだけど、水もガブガブ使って描いたの。

Q.乾かすのが大変そうですね。
A.そうなのよ。タワシでゴシゴシこすったりもするもんだから、画用紙がクタクタになっちゃって。
だけど、妙に面白い質感になりましたね。

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野兎の跳び

Q.これが以前よく制作していたという蝋(ろう)画ですね。
A.肉感的で、生々しいでしょ。
蝋画はメチャクチャ面白いんだけど、作業に時間がかかるし、結構疲れるのよ。
一時ハマり過ぎちゃって、ちょっと神経が危なくなったこともあってさ。
油彩画で使うナイフをガスコンロで焼いて、それでロウソクを溶かして、画用紙に貼り付けていくの。
絵でする彫刻、といったらアレだけど、そんな感じ。

Q.観る角度や光の加減で雰囲気が大きく変わりますね。
A.そうなの。
部屋を暗くして、画用紙の裏からライトの光を当ててみても面白いんですよ。
ボワーッとね、ナマっぽさが浮き出てくるの。
だから、そういう仕掛けの額を特注で作れないかな、と思ったこともあったんだけど、ちょっと難しかったんだな。
絵より額が高くなるもツライしね。

Q.ウサギの顔が見切れているところに躍動感を感じます。
A.うまく画用紙に収めようとしてるわけではないから。
私、構図とかそういうのは、実は全然気にしてないんですよ。

Q.小さい頃に野ウサギを飼ってみたことがあるとか。
A.どうやって捕まえたのか、憶えてないんだけどね。
野生のウサギは凄いよ。
全く懐かないし、人間の与えた草とか一切食わないの。
とにかく木箱の中で暴れまくってさ、次の日見たらもう死んでた。
たぶん自殺だと思うよ、「憤死」っていうかさ。
捕まったのがよほど頭にきたんだべな。

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ハタハタの海

Q.どこの海をイメージしたのでしょうか?
A.秋田の男鹿半島のあたりの夕景だね、真冬の。
なんか妙にモノモノしい感じがするでしょう?

Q.何か男鹿にまつわる思い出などはありますか?
A.昔、TV番組の撮影で男鹿に行って、ハタハタの生態を取材したことがあって。
私がリポーター役だったんだけど、黒い海に雪が轟々と降ってて、その時の印象が忘れられなくて。

Q.中央部の岩礁の黒と夕陽のコントラストが強烈ですね。
A.実際、取材の時は凄かったんですよ。
暴風で、暗くて、もう呑み込まれそうな感じでさ。
だけど、海に降る雪って、なんか良いもんでしたね。

2021cln-c-title08
大島へ行った

Q.伊豆大島へは写生旅行に行ったことがあるそうですね。
A.個展に出す絵を描こうと思ってね。
色んな画材をカバンに詰めて、船に乗って出かけたの。

Q.どれくらい滞在したのですか?
A.一人っきりで、民宿に一週間くらい居たのかな。
あっちこっちの島とか、神社とか、元町港の風景なんかをスケッチして。
夜に部屋で酒呑みながら絵の具を塗ったりしてさ。

Q.大島では何枚くらい描いたのですか?
A.20〜30枚くらいは描きましたよ。
あのねえ、私、描くのが速いのよ。
もともと専門的な技術もないし、スケッチもすぐ終わるの。
それで、時間を持て余してね。
漁港の横にあるパチンコ屋に入ったら、これが全然出ないのよ。
頭にきて、あたら金を溶かしちゃってさ。
しょうがないから東京の知人に電話して送金してもらって、それで宿賃を払ったんだよ。

Q.この絵も、その時に手がけた一枚なんですね。
A.そう。押入れの中から見つけた時、嬉しくてさ。
また新たに手を加えてね、こんな感じになったのよ。

Q.当時、個展の反響はどうでしたか?
A.結構売れたんだけど、ちょっとビックリすることがあってね。
これとは別の船の絵を展示してたんだけど、たまたま個展を観に来たお客さんが、モデルにした漁船の持ち主の娘さんだったのよ。
「なんとか丸」っていう、船の名前も描いてたからね、「もしやこれは!?」って言って。
娘さんも興奮しちゃってさ、すぐにお父さんに電話して、その絵を買ってくれたの。
いや、不思議も不思議、奇縁も奇縁なんだけど、私、そういうの結構多いもんですから。

Q.墨の滲み方と、絵肌の質感が独特ですね。
A.青墨(せいぼく)という墨ですね。
知人からもらった中国の墨なんだけど、私は磨らないでそのまま使うの。
画用紙を水で濡らして、その上に直接、クレヨンみたいな感じで。
滲み方はコントロールできないんだけど、そこが面白いんだな。

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特別な日

Q.このキャラクターは……獏(ばく)ってヤツですか?
A.これがねえ、私にもわからないの(笑)。
ブタでもないし、もちろんウサギでもないし。
やっぱり昔描いた下絵に色を足していったんだけど、もともと何を描こうとしてたのか、全然記憶になくて。
なんなんだろうね、一体。

Q.現物を観て、背景の青のニュアンスが印象に残りました。
A.これも狙ったわけじゃないんだけどね。
何度も言ってるけど、やってみないと、どうなるかわからない。
そこが楽しくて、飽きないんだよな、絵は。

Q.月と生物の肌の色味も幻想的ですね。
A.まあね。その辺りも含めて「出鱈目な絵」というカテゴリーでひとつ。
宜しくどうぞ、ということで。

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10ブルゴーニュの川

Q.モチーフは、かつて欧州公演で訪れたフランスのブルゴーニュ地方の風景ですね。
A.そうそう。15年ほど前かな、ツアーで歌いに行った時に見ていた風景。マネージャーの大関くんが撮っておいてくれた写真を見ながら、私なりに描き起こしてみたというかね。もちろん写真の通りには描けませんけども。

Q.空と川の清冽な青が、まず眼に飛び込んできますね。
A.まあね。別にそこまで狙って描いたわけじゃないんだけど。私の中に残っていた印象というか、雰囲気であって。

Q.ブルーゴーニュの思い出を教えてください。
A.コーヒーとパンが美味しくて、ワインも昼からいっぱいご馳走になりました。そういう習慣なんだろうね、昼飯のときにワインをガブ飲みしてさ。ライブの日はちょうどハロウィンだったみたいで、子供たちがめんこい仮装をして道端にいてね。それで、「ボンジュール!」って元気よく声かけたら、みんな一斉に逃げて行っちゃって。いやいや私、なまはげじゃないんだから。

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11ブルゴーニュの家並

Q.家々の色彩がとてもきれいですね。これは夕景でしょうか?
A.いや、そうでもないのよ、実は。窓に灯りが灯っているようにも見えるけど、空は青いわけだし。この空の感じ、ちょっと面白いでしょ。これも偶然できたんだけど。ストーブの前で乾かしながら塗り足して、ちょっと横になって乾かして、また起きては塗っての繰り返し。やっててどんどん面白くなってきちゃってね。だから空だけは結構時間かけたんですよ。

Q.建物それぞれに存在感がありますね。
A.そんなに繊細に描いたつもりもないんだけど、なーんか、お菓子みたいでしょ? やっぱりね、色彩感覚の違いなんだよね。私のじゃなくて、街自体の。

Q.日本のどこか湿り気のある感じとは全然違っていて。
A.うん、日本の街の感じも、それはそれで良いとは思うけど、ヨーロッパはとにかくカラフルでね。まず、服装からして違うでしょう。ジッコババでも、やたら派手なジャンパー着てたり、日本人じゃ考えられないような柄の。だから、国とか地方自体が持っている色彩感覚なんだろうな。その違いが面白くてね。

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12二郎の庭にふりつむ

Q.まず、タイトルの由来を教えてください。
A.最近、小山田二郎の、特に「庭」という作品が頭から離れなくて。その絵からもらったエネルギーを注いだの。

Q.デッサン自体はもともとあったのですか?
A.そう。やっぱり昔の下絵を見ていた時に、「ああ、これだ」と思って。「ここに『庭』からもらったエネルギーをぶつけよう」って、描いてみたらこういう感じに仕上がったわけ。これまた、不思議な絵になったんですけど。

Q.このウサギを抱いた人物は友川さんご自身ですか?
A.いや、そういうのは全然関係ないし、そもそも考えてもない。そんなことより、構図がなんか面白いでしょ? 妙な感じで足を組んでたりしてさ。

Q.背景に散りばめられた白い絵の具も、リズムを生んでいるように思います。
A.そうかそうか。自分としては空から輪っかみたいな光が降ってくる感じをイメージしたんだけど、あくまで観る人の感覚とか解釈に委ねているのよ。タイトルも含めて、それぞれが自由に受け止めてくれればいいと思ってるから。だから、あんまり事細かに説明はしたくないんですよね。

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13ブルゴーニュの牛re

Q.これも2006年のフランスツアーの際に見ていた風景ですね。
A.そうです。ライブ会場のすぐ隣に農園があってね。牛が放し飼いされてて、ニワトリなんかもそこいらを歩き回ってたな。フランスって農業国なんだなあ、なんて思ったりね。開演前にワインをガブ飲みしながら、結構長い時間ボーッとそれらを眺めたり、遊んだりしてた。あれはなかなか、いい時間でしたね。

Q.背景の緑、花、そしてパウル・クレーを想起させる石垣もすごく綺麗で、それぞれが違和感なく収まっていますね。
A.やっぱり大関君が撮ってくれた写真を見ながら描き起こしてみたんだけど、やってるうちに色々描き足したくなっちゃって。小さい花なんかは、あくまでイメージで描いたんだけど。なんかハマったというか、面白い雰囲気になりましたよね。

Q.牛の肌も非常にリアルな質感ですね。
A.艶消しメジウムをアクリル絵の具に混ぜてね、かなり厚く塗ってあるの。だから画用紙自体もかなり重くなってるのよ。なんか、ゴツゴツした感じがあるでしょう? 現物をナマで見ないと、なかなか伝わらないかもしれませんが。ただただ綺麗に描くのは案外簡単なんだけど、貼り絵みたいに整然とした感じになっちゃうからね。物質感というか、現存感、ナマな感じが欲しくて、絵の具をどんどん盛っていって。そうやって塗り足してるうちにリアル感が出てきたのよね。

Q.この牛、欧州ツアーの様子を納めた映像(『友川カズキ歌詞集』特典DVD)にも登場していましたね
A.なぜか地元のTV局がライブの取材に来ててさ。それで私、カメラに向かって「マイディナー」と言ったらしいのよ、牛を指差して。カメラマンはちょっと困ったような顔して笑ってたそうですが。

Q.でも、これは乳牛ですよね?
A.そうなんだよ(笑)。このピョコンとしたお乳の感じがいいでしょ? 草を食んでる様子を描いたつもりなんだけど、構図もなんか不思議だよな。前のめりになってて、口のあたりがクニャ〜っと曲がってたり。「牛ってこんなカタチだったっけ?」と自分でも思ったりもしたんだけど、なんかね、逆にリアリティあるのよ。

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14大サーカスの日re

Q.友川さんらしい、エネルギッシュかつエキゾチックな一枚ですね。
A.これも、もともと描いてあった未完の下絵にどんどん色を塗っていって。最初からサーカスの絵を描こうとしたわけじゃないし、タイトルも後付けなんだけどね。いざ仕上げてみたら、雰囲気がさ。なーんか、サーカスぽいな、と。

Q.サーカスに何か特別な思い出などありますか?
A.あるよ。小学生の頃に能代市に「木下大サーカス」が来てね。バスに乗って、一回だけ観に行ったのよ。それが幼心に強烈でね。特に「オートバイの樽まわり」にビックリしちゃってさ。

Q.「イカを買いに行く」の歌詞にも登場しているヤツですね。
A.そうそう。エンジンが轟音を上げて、でっかい樽の中をバイクがグルグル走り回るのよ。それを斜めの階段を登って行って、上から見るんだけど。あれこそ興奮のるつぼよ。今でも思い出すとドキドキしますね。描いてたら、その時のイメージがポッと浮かんできて。

Q.背景に散らばる図形も、ひとつひとつが面白いですね。
A.ああ、これは先日描いた『二郎も、クレーも、ヘルペスも、』と同じワザですね。筆の代わりに爪楊枝を使って描いていくんだけど。何回も寝たり起きたりしながら描いてね、結構手間がかかるし、一枚仕上がるころにはゴミ箱が爪楊枝の山になってるのよ。まあ、暇だしさ。爪楊枝も安いから、いいんですけどね。

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15光矢の犬、リンre

Q.三男の光矢君の愛犬、ミニチュアダックスフンドの絵ですね。
A.いやあ、ホントめんこい犬でさ。リンちゃんっていうの。人懐っこくて、聞き分けが良くて、ちょっと物わかりが良すぎるくらいでね。息子が出かけていく時も一切吠えたり暴れたりしないし、あんないい犬見たことない、というくらいで。

Q.今も元気に生きているのですか?
A.いや、もう死んじゃったんだけどね。ライブの帰りによく息子のアパートに泊まってた時期があって。ある時、息子が朝早く出勤した後に部屋にリンちゃんと私だけになってね。それで、なんとなく気になって、何時間がリンちゃんと遊んでから帰ってきたりしてたの。たまたまカバンにノートがあったからデッサンしてみたんだけど、この絵はそれを仕上げたものですね。

Q.しかしリンちゃん、目ヂカラがありますね
A.可愛くてね。私の布団で一緒に寝てても、いつの間にか息子のベッドに移動してたりするのよ。健気というか、実に犬らしいというか。ちょっと寝取られた気分でしたけども、やっぱり飼い主の側がいいんだろうね。

Q.一方で、青と紫のバックが独特の雰囲気を醸し出しています。
A.一部にクレヨンを使ってるんですよ。アクリル絵の具と重ねて塗ると、これまた面白い雰囲気が出たりするので。たまにやるんですよ。

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16幼女熱唱

Q.お孫さんが歌っている様子を描いたものですね。何の歌を歌っているんですか。
A.これがわからないのよ。部屋の中をドンドンと歩き回りながら、あまりに堂々と、あまりに朗々と歌うもんだから、なーんか忘れられなくて。デッサンしたわけじゃなくて、その残像で描いてみたの。コロナがこんな風になってからは、会ってないんだけどね。しょうがないね、これだけは。

Q.だいぶ大きくなったでしょうね。
A.子どもはすぐに大きくなっちゃうからね。もう1年以上会ってないんだけど、この間久しぶりに電話で話してさ。もうかなり言葉もしっかりしてきたようだね。機嫌良かったみたいで、電話口で「犬のおまわりさん」を歌ってくれましたよ。保育園で習ってきたらしいんだけど。

Q.絵を観てすぐに、この大きな目にグーッと吸い寄せられる感じがありました。
A.そうそう。めんこいんだけど、なーんか、意志が強いっていうか、自我が強いっていうか。ハッキリした子だね。一回泣くとなかなか泣き止まなかったりするらしいのよ。

Q.確かに、おもねらない感じが伝わってきますね。友川さんの血を受け継いだんでしょうか。
A.どうかね。まあ、エッセイに書いたり歌にもしているけど、私も小さい頃は「虫かぶり」、いわゆる疳の虫だったんだな。大きくなってからお袋とかおばあちゃんに聞かされたんだけど、すごかったらしいの。泣き喚いて走り回ってさ、周りの大人は怪我しないように見守るしかなかったらしいんだな。

Q.友川さんが背景に赤を使うのは珍しいと思うのですが。
A.彼女のエネルギーを表現したくてね。この口の形も鳥みたいでちょっと面白いでしょ? ツバメの赤ちゃんみたいなね。

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17永遠と刹那

Q.こちらも女性を描いたポートレートですが、モデルは?
A.いや、特にいない。「永遠と刹那」っていう言葉が先に浮かんで、「復讐バーボン」の歌詞からとったタイトルなんだけど。そのイメージでなんとなく女の人をね、ボーッと描いてみたの。気の強そうなね。ああいう女によくいじめられたよ(笑)。

Q.顔にたくさん色を使われていますが、雑然とした印象は不思議となくて。
A.妙なリアリティがあるでしょ? 抽象画でもないし、具象画でもないんだけど、分野で言ったらいわゆる「出鱈目派」ってヤツですね。とにかく色を使うのが面白いのよ、やってると。都築(響一)さんに教えてもらった江上茂雄さんの絵を初めて見た時もそうだったけど、私の場合はやっぱり色使いに反応するのよね。なんてことない風景を描いてるんだけど、赤い屋根の家を描いた絵があって、その色が一番印象的だったな。村山槐多のガランスもそう。「どの絵か」というよりも、「どの色か」っていう感じがあって。色に持っていかれるんだよなあ。

Q.メジウムを使ったり、絵の具を厚塗りしていることもあるのでしょうが、独特の存在感がありますね。
A.凹凸がすごいべ? バックのグレーは油絵用のナイフを使って、グワーッてね、アクリル絵の具を塗ってみたの。あのグレーで、いい感じに落ち着いたみたいだね。

Q.人物を描くのと風景や静物を描くのとでは、テンションが違ったりしますか。
A.風景画はいつでも描きたいんだけど、どうしても時間と手間がかかるのよ。写真を見て描くこともあるけど、まず外に出て下絵を描かなきゃダメでしょ? 人前でイーゼル立ててデッサンしたりするのがイヤなのよ。こそばゆくて。だから、昔はわざわざ早起きして明け方に街に出て描いたりしてたの。人に見られるのがイヤで。サッと描いて立ち去りたいから、板かなんか持って行って地面に置いて、その上に画用紙を置いてデッサンしてたのよ。

Q.地べたに画用紙を置いて描いている写真が残ってますよね。
A.そうそう、あんな感じですよ。動物園に行って描いた時も家からバケツ持って行って、スケッチはほとんどしないで、ドバドバ水を使いながら直接絵の具で描いていって。外で描くのはダイナミックといえばダイナミックなんだけど、とにかくチマチマやりたくないのよ。気分的にね。

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18ルドンにおかされた

Q.歌も含めて、友川さんには花にまつわる作品が結構ありますね。
A.花って、なーんか反応しちゃんだよねえ。ライブで地方なんかに行っても、路肩に咲いてる野花が気になったりして。何年か前に大関君たちと立山に遊びに行った時も、いろんな見たことない花が咲いてて嬉しかったなあ。帰ってきてから図書館で高山植物とか山の草花の図鑑を何冊も借りたよ。

Q.しかしこの絵の花は…実在しない花ですよね?
A.そうだよ。出鱈目よ。これも昔書いた下絵をベースにしてるんだけど、「ルドン」って書いたメモと一緒に押入れから出てきたのよ。昔、国立近代美術館にオディロン・ルドン展を3日連続で観に行ったことがあってさ。いや、あまりに素晴らしくて、ビックリしちゃって。

Q.ルドンの花の絵も一種独特ですよね。
A.色の使い方がもう、凄いよね。メチャクチャな勢いを感じるのよ。花じゃなくて、描き手のね。ハンパじゃなく生々しいんだけど、クサくないんだな。イヤらしい作為が一切ないの。あんなにカラッと暴れてる絵って見たことなかったもん。ただただ夢中に描いた、という感じがして。

Q.そういう意味でも、この絵はやはりルドンに触発された作品と言って良さそうですね。
A.まあね。あ、それでね、かなり前に大島渚さんにCDのライナーノーツの執筆をお願いしたことがあったんだけど、大島さん、「友川の目はルドンが描いた目玉のようだ」というようなことを書いてくださって。大島さんとはルドンの話もルドン展の話もした覚えはなかっただけに、妙な因縁というか、これまた驚いちゃって。大島さんは絵にも詳しくて、画家の鶴岡政男さんと親しかったそうだけど、「友川さんの話し方は鶴岡さんに似てる」ともおっしゃってましたね。

Q.背景の黄色の変化や、斜めに走るグレーの置き方も面白いですね。
A.たまたまこうなったのよ。最初は花のバックには黒を使って浮き立たせる感じにしようかとも思ったんだけど、なんかあざとくなるような気がして。それでたまたま手元にあったグレーを試しに塗ってみたら意外と良くてね。本当は全体に塗るつもりだったんだけど、ふと、「あ、全部塗る必要ねえな」と思って。それで手を止めたら、ああいう感じの線になったのよ。

Q.小さい頃から花が好きだったんですか。
A.好きっていうか、印象深いんだよね、花のある風景の記憶が。春先に残雪の間から最初にポッカリ顔を出すのが、決まってふきのとうとスイセンだったりね。あの風景は忘れられない。「春が来たど!」って感じで、すんごい気持ち良くて。あとは、畑に咲いてるケイトウとかさ。夏はヤマキキョウ。お盆の頃になるとね、行商人がいっぱい花を背負って村に売りに来るんだよ。その頃の田舎はみんな貧乏だったしさ、季節の花を買って飾るのが、ほとんど唯一の贅沢だったの。ちょっとした気持ちの余裕が欲しかったんだろうし、花がその証だったんだろうな。

Q.花を部屋に飾ったりします?
A.いつも白い菊を2輪ずつ買ってきて花瓶に活けてるの。枯れると落ち着かなくてね。すぐに新しい花を買いに行かないと気が済まないのよ。花を買って来た日は、亡くなったお袋や肉親の写真の側に置いて、ロウソク立てて線香あげるのよ。まあ、信心なんか全然ないし、自分のためなんですけどね。花は見る人のものだから。線香もそう。あげる人のためのものなのよ。今度は金魚草でも買って来て描いてみたいんだけど、今は季節外れかもね。

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19大島でスケッチ

Q.これも以前、伊豆大島で制作したという風景画のひとつですね。
A.そう。画用紙と画材を持ってね、ぶらぶら歩いてたら、いい感じのお宮を見つけてさ。昼間にささっとデッサンして、夜に民宿の部屋で色を塗ったのよ、酒呑みながら。

Q.朴訥とした佇まいながら、ちょっと引き込まれる感じがありますね。
A.なんとなく味があるのは、多分クレヨンを使ってるからだよね。画用紙を地面に置いて、鉛筆は使わないで初めからクレヨンで描いたんですよ。いきなりクレヨン(笑)。技術がない分、迷いがないのよ。

Q.確かに、クレヨンの無骨な線がアクリル絵の具の色彩を引き立たせているようです。
A.クレヨンのザラっとした質感がね、自分の中でリアリティを感じるのよ。ずっと押入れに仕舞ってあって忘れかけてたんだけど、久々に手に取ってみたら「あっ!」と思ってね。それで、ちょっと発表してみようかな、と。

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20モーリス・ユトリロ

Q.色遣いが何かお洒落な感じがしますね。
A.バックのクリームっぽい色のニュアンスが面白いでしょ。これはね、ブラックコーヒーを薄めないでそのまま筆に含ませて塗ったの(笑)。このところ毎日飲んでるキリンの「ファイア・ワンデイ」ってコーヒーなんだけど、いつも部屋に置いてあるからね。試しに塗ってみたら、これは久々にヒットだな、と。ちょっとだけ藤田嗣治の、あの乳白色みたいなイメージでね。

Q.それは全く気づきませんでした。
A.前によく使ってた醤油の場合は、もうちょっと濃い色になるんだけど、乾くまで臭いが残るのよねえ。ハエがたかって困るのよ。砂糖もそう。色々と痛い目に遭ってるからね。

Q.ユトリロは友川さんに絵を描く愉しさを知らしめた画家とのことですが。
A.キザな言い方をすると、絵というものが自分の裡に取り込まれた、というかね。中学2、3年生の時かな。担任が美術の先生だったの。I先生といって、ある時、授業でユトリロの絵をみんなに模写させたんですよ。私は上手くは描けなかったんだけど、いや、それが面白くて面白くて。

Q.どんな絵を模写したか憶えていますか。
A.風景画よ。いわゆる遠近法を学ぶ、というテーマの授業だったんだけど。その時何故か、ハシカにかかったみたいにね、私に入っちゃったのよ。それからというもの、自分の中にユトリロの風というか、ユトリロの周期みたいなものが出てきてね。

Q.定期的に思い出すというか、表に出てくる感じですか?
A.そう。時々ふっと、ユトリロの絵が見たくなるのよ。20年くらい前かな、横浜のデパートで「ユトリロとその周辺」っていう展覧会があって観に行ったんだけど。その時も中学生の時に自分の裡に入った感覚、何かが芽生えた感じがグーっと蘇ってきて。嬉しくて嬉しくて。それで最近もふっと思い出して、昔買った画集を探したら、これが見つからなくてさ。それで近所の図書館にお願いして他から取り寄せてもらって、でっかい画集を借りたの。この絵は、その本に載ってた本人の写真を見ながら描いてみたものですね。

Q.ユトリロの場合は実人生がまた、壮絶ですよね。
A.アル中だったわけだしさ。伝記やなんかも読んだけど、お母さんとの関係性だとかも含めて、やっぱり尋常ならざるものを感じたのよ。そこでまた、何かがさらにリンクしていった、というか。

Q.しかし、前述の美術の先生との出会いがなかったら、何も始まらなかったわけですね。
A.非常に個性的な先生でね。私たちに絵を描かせながら、教室でタバコ吸ってボーッと外見たりしてたんだよ。今じゃ考えられないことだけど、なーんかいい雰囲気だったよな。「一本タバコくれ」って言ったら、「ほれ」って、くれそうな感じでさ(笑)。

Q.RCサクセションの歌みたいですね。
A.そうそう、「ぼくの好きな先生」ね。あんな感じよ。清志郎さんも美術部だったんだよな。彼の絵も何点か観たけど、素晴らしかったよ。

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21ユトリロの宝箱

Q.不思議な浮遊感のある建物の絵ですが…。
A.あのね、これも最初はユトリロの画集に載ってたアトリエの写真を見ながら描いてたんだけど。原形をとどめていないのよ(笑)。夢中で描いてるうちにさ、「あれ?」と思って。

Q.建物の部分にたくさん色が使われていて、確かに宝箱をぶちまけた感はありますね。
A.だからもう、そう言うしかないよね(笑)。もともと、「ユトリロの画室」ってタイトルを考えてたんだけど、それはちょっと失礼かしら、と。とにかく色を塗ってるうちに楽しくなっちゃって、いわゆる「ゾーン」にね、入っちゃうんだよなあ。それで気づいたら、なんか違うぞ、と。仕方ないから、こういうタイトルにしました。

Q.引っかき傷のようなマチエールも印象に残ります。
A.建物は爪楊枝で描いてるんですよ。アクリル絵の具のチューブを絞って、水に溶いたりしないで、爪楊枝でそのまま塗ってみたりして。私には基礎がないからね、こんな荒っぽいことができるのよ。

Q.これも、友川さんにしか描けない絵ということですね。
A.まあね。基礎技術なりテーマなりがあったら、こういうことはまずやらないよね。どう考えたってこんな風な建物に住んでる人はいないだろうし。漫画家の楳図かずおさんくらいじゃないかな(笑)。

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22幼少期(敵対Ⅱ)

Q.以前、雑誌(『季刊 銀花(2005年秋号)』)の綴じ込み絵本として発表された連作墨絵のひとつですね。
A.そうそう。「ネコがどうしてもダメ」っていうタイトルでね。もう、そのまんまの内容なんだけど(笑)。未だに猫だけはねえ、怖ろしいのよ。テレビなんかに映ってるのも、あんまり生々しいとチャンネル変えるのよ。あの眼がキツくて。ネコをやたら愛でる人もダメ。気持ちはわからなくはないんだけど…正視に耐えないのよ。

Q.確かに、猫がやたら大きく描かれていて、友川さんの怯えが伝わってきますね。
A.ネコが完全に優位に立ってるのよ(笑)。いや、なんてったって天敵だからさ。前にも言ったけど、小さい頃に飼ってた鳩やウサギを殺されてね。それでダメになっちゃったのよねえ。

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23遠い朝

Q.これも同じシリーズからの1点です。
A.ネコが縁側から逃げてる様子を描いたものですね。私が育った家でも一応ネコを飼ってはいたんですよ。でも、私が毛嫌いしてるのをネコも知ってるから、全然寄り付かないのよ。邪険にしてたら、側に来なくなったんだな。

Q.なるほど。その距離感を表現したわけですね。
A.微妙な距離を置いて、チラッとこっちを見たりさ。それさえ怖かったもの(笑)。あ、そうだ。宮城のローカル番組でレギュラーコメンテーターをやってた時、ある精神科医の先生が時々ゲストで出ていてね。たまたまネコの話題になった時、彼が「私もネコがダメなんです…」って言って。やっぱり、「あの眼がイヤなんです」って言うもんだから、なーんか意気投合しちゃって。

Q.ネコの眼はちょっと人を見下してる感じがありますよね。
A.そう。狡猾そうで、全部見透かされてるようで。でね、その先生とは仙台の「蔵いち」っていう行き着けのお寿司屋さんで何回か呑んだりもしたのよ。実は、彼の病院にお世話になってた時期もあってさ、ちょっと助けてもらったの。だからまあ、ネコ嫌いから生じた縁ではあったんですよ。

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24動物園が好き(敵対Ⅲ)

Q.これもやはり連作中の1点ですが、色を描き足して雰囲気が変わりましたね。
A.あっさりと塗ってみたんだけどね。タイトルも全然関係なくしたのよ。何を描こうとしてたのか思い出せないしさ(笑)。

Q.元々は、中央部のグルグルはネコの視線を表していたようですが…。
A.そうなんだ(笑)。まあ、絵はその時その時の感情、感覚でしか描いてないから。基本的にガキなのよ。だからこんなに数が描けるんですよ。もちろん失敗も成功もあるんだけど、とにかく飽きないの。プロの画家だったら、悩みとか産みの苦しみとかもあるんだろうけど、そういうのは一切ないから。出たとこ勝負だし。行き着くべきところなんか私の絵にはハナっからないわけで、だから悩む理由がないのよ。

Q.「常にどうなるかわからない」ことの効用ですね。
A.そもそも、自分がない、とも言えるのかもしれない。小林秀雄風にいうと、「無私の精神」よね。ホントはもっと立派な言葉なんだろうし、小林秀雄のいう境地とは違うだろうけど、描いている時はもう夢中なのよ。この歳になってこんなことを言うのもなんだけど、いわゆる無心になれるの。ところが歌は、なかなかそうは行かない。

Q.なるほど。確かに、友川さんの歌は「私」なくして成立しませんよね。
A.歌はもっと具体的なものだし、まっすぐ対象に向かっているものだから。確かに歌も創造的ではあるけど、異質なんだよな。私にとって絵は遊びだから。で、暇さえあれば、遊びに雪崩れ込んで行っちゃう感じがあるのよ。「ここから何者にでもなれるんだ」みたいなね。言葉にすると嘘っぽいけど、そういう感覚なんだよね。

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25気分屋は正しい

Q.友川さんならではの独特の色遣いを味わえる作品ですね。
A.そうなんだけど、こういう色彩感覚になってきたのは意外と最近なんですよね。昔はこうじゃなかったもの。突然ね、ここ2〜3年の間にこういう感じになっちゃったのよ。

Q.多彩な絵の具が使われていて、しかも結構重ね塗りされてますよね。
A.昔はね、根を詰めてジックリ描くのが嫌いだったの。エネルギーを画用紙に全部吸われちゃうからね、疲れるのよ。ところが最近、これが実は結構根を詰めてて。飽きずにボンヤリ遊んでるうちにね、こんな風になっていくのよ。ぬり絵感覚というか、とにかく面白いんだよね。

Q.このキャラクターのモチーフになっているのは…。
A.これも昔描いたデッサンをベースにしてて、何を描いたのかハッキリ覚えてないんだけど…。あ、多分アレだ、多摩川のタマちゃん(笑)。

Q.ああ、一時話題になったアザラシの。
A.そう。別に写真とか映像を見て描いたわけじゃないんだけど、なんとなくそれっぽい感じあるでしょ? しっぽとか(笑)。でね、何よりもこのタイトルが気に入ってるのよねえ。

Q.確かにタマちゃん、神出鬼没で気分屋っぽかったですし。
A.そうなのよ。…あ、タマちゃんでまた思い出した! テレビで話題になってた当時、たまたまライブを観に来てくれた知人の増井光子さん(獣医師/上野動物園長、よこはま動物園ズーラシア園長などを歴任)に、「タマちゃんは人間の手で海に帰した方がいいんじゃないですか?」って訊いてみたのよ。そしたら増井さん、「あのまま放っておけばいいの。水が合わなきゃ勝手に出て行くんだし、自然のままにしておく方がいいんです」って言ってね。その言葉がやけに印象的で。

Q.増井さん、生前はライブにもよく来てくれていたそうですね。
A.うん。イギリスでね、落馬事故で突然亡くなっちゃって。ホント少年みたいな、やわらかい人だったな。大酒呑みで、妙に気が合ってさ。でも自宅でヘビ飼ってるって言うから、それだけが怖くてね。いやあ、タマちゃんの話で思い出したよ。懐かしいな。

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安子ガンバレ!

Q.線画というか、こういったドローイングは以前からよく描かれてましたよね。
A.そうそう。サインに添えたり、色紙にしてプレゼントしたりもしてたな。観ててラクっていうか、疲れないでしょ? 確かに「眼にモノ見せる」のも表現ではあるんだけど、こういう手が勝手に動いていく感じの絵も好きでね。これは世界卓球の中継を見ながら描いたんだけどね。

Q.近作とは打って変わって色遣いが抑制的ですね。
A.最近は絵の具てんこ盛りやってたからね。ヒマだしよ(笑)。いや、あれはあれで結構疲れるんですよ。出鱈目に描いてるように見えて…いや、実際に出鱈目ではあるんだけど。開放感とか達成感だけじゃない、何かが蓄積していくのよ。

Q.あえて塗らなかったところや配色といい、何かお洒落な感じがします。
A.そうかしら。まあ、この手の絵には何ら作為がないから。「モノにしてやろう」っていう意思もテーマもない。ドロっとしたものが一切ないから、そういう印象になるのかもね。私はパウル・クレーの絵が大好きなんだけど、何が好きって、あの軽さ。イヤ味が一切ないでしょう。初めて観た時、フワーッと体が宙に浮く感じがしたもの。だから多分にクレーの影響はある気がする。 

Q.なるほど。
A.カラダに馴染むっていうのかな。きれいな水が細胞に浸透していく感じ。よく、「美味い日本酒は、美味い水に似ている」って言うじゃないですか。もちろんそれとは話が違うかもしれないけど、観てて疲れない絵ってね、実はあんまりないんですよ。

Q.タイトルがちょっと思わせぶりな感じですが。
A.深い意味はないよ。最近、「やす子」ってお笑い芸人が出てきたでしょ? 自衛隊上がりで、いつも迷彩服着てて。あの田舎っぽい、素朴な顔立ちに妙な郷愁を感じてね(笑)。「ああ、そういえば学年に一人は必ず『やすこ』って女の子がいたなあ…」と。もう顔も覚えてないんだけどさ。それだけ。

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賑やかなアーチ

Q.人物の上方にウサギがいるという構図はよく描かれていますね。
A.うん。これも昔描いた下絵に色を描き足して完成させたんだけどね。しかしウサギはもう何百羽描いたのかなあ…。飽きないんだな。

Q.ウサギと人物の墨の滲みがいいですね。
A.これは紫墨(しぼく)ってヤツだね。中国の墨で、昔、誰かからもらったんだと思う。色もそうだけど、面白い滲み方をするんですよ。残念ながらもう手元にはなくて。日本の文房具屋でも扱ってるところはあるけど、いかんせん高くてねえ。

Q.やっぱり使う墨によって滲み方が違うんでしょうね。
A.全く違う。100均とかで売ってる安物は全然ダメだね。滲むことは滲むけど、色がつまらなくて。紫墨や青墨(せいぼく)は滲みが広がった時にワクワクするんだよな。下に板をひいてね、画用紙をベチョベチョに濡らしておくの。そこに水に浸けて軟らかくした固形の墨をあてて、そのままスーッと描いていくのよ。これがねえ、死ぬほど気持ちいいの。

Q.バックの色遣いも、やはり独特ですね。
A.ごく淡くね、赤っぽい色とかを塗り足してみたんだけど。あ、ウサギの眼玉も今回描き直したんですよ。元々はなーんか意地悪そうな眼つきでねえ。ちょっと引っかかる感じがしたから、このたび可愛らしくしてあげました(笑)。

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トウキビ畑

Q.大きめの絵ですが、いつ頃の作品ですか?
A.30年くらい前に描いた蝋画なんだけど、引っ越しの時に押入れの奥から出てきたのよ。それに少し手を加えて。

Q.空と緑の色彩も目に鮮やかですが、画肌のインパクトが物凄いですね。
A.蝋画はねえ、なかなか疲れるのよ。面白いことは確かなんだけど。真っ赤に焼いたコテでロウソクをジュッと溶かしてね。画用紙に貼り付けて、その上からアイスピックみたいな金具で線を刻んでいくんですよ。

Q.蝋画は最近は制作してないですよね?
A.うん。というのも、結構リスクを伴うの。ロウが溶ける匂いと煙を吸うとね、時々クラっとするのよ。集中しすぎると前頭葉がヤラれる感じで、カラダが持っていかれちゃうんだな。しかも、ガス代もメチャクチャかかるしさ。いろいろと、体力要るのよ。

Q.なるほど、文字通りの大労作なんですね(笑)。
A.笑い事じゃないんだよ。……あ、そうだ、黒い影っぽい部分はロウを溶かす時に出るススなんですよ。絵の具とも墨とも違う独特の色味というか、雰囲気が出るんだよね。

Q.光の当て方、当たり方でも印象が大きく変わります。
A.そう。ゴツゴツしてて、彫刻ぽくて。蝋画はホント、いろんなリスクを背負うぶん、想像もつかないような仕上がりになったりするの。まあ、気合も時間も必要だし、今はちょっと無理だわな。ガス代高くなるのもイヤだし(笑)。

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カマクラで遊んだ

Q.カマクラも幼い頃の思い出のひとつ?
A.ちっちゃい頃に近所の子供がたが集まってね、中で遊んでたんですよ。火鉢を置いて餅を焼いたり、インスタントラーメンをお椀に入れて持って行って食べたりして。

Q.子供たちの表情がいいですね。
A.意味もなくキャッキャしてさ。狭いし、やる事といってもそんなにないから、すぐに飽きちゃうんだけどね。

Q.紫墨(しぼく)の滲み、やはり独特ですね。
A.そうなのよ。入り口に置いてある長靴のカタチとかも、なんか可笑しいでしょ? 墨絵は基本、速描きだから。

Q.ちなみに下の方にいる動物は…。
A.犬ね。気づいてないだろうけど。